Sancerre Vendange du 10 Octobre AOC, Blanc
/サンセール“ヴァンダンジュ・デュ・ディス・オクトーブル” 白  *参考品
*ワイン名:サンセール
“ヴァンダンジュ・デュ・
ディス・オクトーブル” 白
*原産国/地方:フランス/ロワール地方
*格付け:AOC
*ブドウ品種:ソーヴィニヨン・ブラン
*コメント
ブルゴーニュのモレィ・サン・ドゥニのドメーヌ・デュジャックで研鑽を積んだジル・クロシェ率いるドメーヌ・リュシアン・クロシェは,古くからサンセールの指標とされてきた名門ドメーヌ。近年新世代の台頭が著しいサンセールだが,今,この歴史的ドメーヌの評価が劇的に再燃している。フランス最高のワイン評論家,ミシェル・ベタンヌも発売されたばかりの『ル・グラン・ギド・デ・ヴァン・ド・フランス/2010年版』のなかで,《クロシェはロワールにおけるクリストフ・ルーミエと断言できる・・・》と絶賛。ドメーヌのワインの絶好調ぶりを手放しで賞賛している。そのクロシェが造るサンセールは,古樹のブドウから低収量で造られる“キュヴェ・プレスティージュ 赤/白”が有名だが,実はそれをはるかに凌駕する最高傑作がある。遅摘みが可能になった年に限り,特定の区画で収穫された厳選した過熟ブドウから造られるサンセールの“ヴァンダンジュ・タルディーヴ”だ。通常よりも2週間以上も遅らせて収穫した糖度の高いブドウを,残糖分を残さずに発酵させて辛口に仕立てるこのキュヴェは,モンラッシェを彷彿させる濃いゴールドのローブと,熟れた果実を思わせる濃厚で芳醇な香りと味わいを備えた大変リッチな白ワインだ。トリュフ,フォワグラ,オマールなどの高級食材に抜群に合うことは間違いない。

2006年10月10日に手摘みで収穫したブドウを直接圧搾し,1/3はバリックの新樽100%で,2/3はステンレス・タンクで発酵を行う。発酵は14-17度の低温で,30日間の長期間にわたって行う。その後,引き続き1/3はバリックの新樽100%で,2/3はステンレス・タンクでシュール・リーの状態で熟成を行う。12ヶ月の熟成後,2008年1月に瓶詰め。

濃いゴールドのローブ,熟れた果実を思わせる濃厚な香りを持ち,味わいは率直かつ豊潤。バランスの取れたワインで,余韻が非常に長いのが印象的。アペリティフに,あるいはフォワグラやオマール,トリュフ添えの鶏肉のベッシー(膀胱で包んだ料理),肥鶏のモリーユ茸添え,クリーム・ソースでいただく白身肉の料理にあわせると抜群。

『ワイン・アドヴォケイト190号(2010年8月号)』掲載のコメント
・・・複数の古樹の区画(そのうちの1つは鉄分に富む)と,樽とタンクを併用した醸造に由来するクロシェの2006“ヴァンダン・デュ・10・オクトーブル”は,特別に瓶詰めされるキュヴェだ。過熟した洋梨やアカシア,退廃的なユリ,パイナップル,グレープフルーツ,レッド・ベリー,木や煙などの香りが,グリセリンが豊かで,微かな甘みを備えた口中に,胡椒やセージ,そして刺激的な柑橘類の皮や赤スグリを思わせる対照的な風味とともに誘う。このグリップと刺すようなアタックは,古生代の岩石土光に由来する強烈なグリューナー・フェルトリーナーを連想させる。残糖分は,実際,法的にはギリギリのレベルだが,15.4度のアルコール度数によって甘さを感じさせるワインのニュアンスが説明できる。クロシェ自身がこのワインの香りがコンドリューと類似していることを指摘して以来,私は政治学的にも地質学的にもオーストリアを不適切に暗示したとは感じていない。必然的に,このワインにはいくらかの温かさがある。しかし,舞台を台無しにしてはいない。あと数年はこのワインの魅力を想像することができる。  ★90/100点

『ワイン・アドヴォケイト172号(2007年8月号)』掲載のコメント
(評価:2002 ヴァンダンジュ・デュ・ディズ=ヌフ・オクトーブル)
・・・クロシェの特出するもう1つのキュヴェは,同じ畑のブドウを乾燥・遅摘みして造られた適度に糖の残るものだ。コミス梨,飴煮にしたパースニップ(白にんじん),そして炒ったナッツの香りが際立っている。まろやかでリッチな舌触りで,深みのあるナッツのオイル,黄金色になるまで飴煮にされた果樹果実,そして根菜のフレーヴァーを持つ。目を見張るほどの透明感とジューシーさ,そして漂う上品さを残し,長く洗練されたフィネスへと続く。今後何年もこのワインを楽しみに待つことができることは間違いない。  ★91/100点


画像:10月下旬の収穫後の畑