HOME >> 生産者情報 >> ジャン=ルイ・ライヤール(フランス/ブルゴーニュ地方) 
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ドメーヌの概要
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ジャン=ルイ・ライヤール
所有区画図
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2020年作柄状況
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ジャン=ルイ・ライヤール
インタビュー
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各キュヴェの詳細
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出水商事(以下、IZM): あなたは、ワインの熟成中、澱引きもバトナージュもまったく行わないとのことですが、通常バトナージュをして樽の底に沈殿する澱を浮遊させないと問題が起きること(澱がワインの重さで潰されるため)があると聞いていますが、熟成中、澱が樽の底に沈殿した場合はどのようにしているのですか?

ジャン=ルイ・ライヤール(以下、JLR): 確かに私のワインは15-18ヶ月の間、澱と一緒に熟成します。この間、バトナージュは行わず、ワインは澱によって養われます。例えば、マロラクティック発酵の際に発生する炭酸ガスによってワインが酸化から守られるため、二酸化硫黄を過剰に添加する必要がありません。ワインの分析表を見ていただければ私のワインに含有されるSO2が非常に少ないことがお分かりいただけるでしょう。私は、熟成中にバトナージュを行う必要はないと考えています。なぜなら、大抵の場合、澱は低気圧の時にはワインのなかに均等に浮遊し、高気圧の時には樽の底に沈殿するからです。私はこの特性を利用して、瓶詰めの1ヵ月前に熟成を終えたワインの澱引きを行い、瓶詰め時期がちょうど高気圧の時期になるよいプログラミングしています。参考までに、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティも私とまったく同じ方法を取っています
 シュール・リーの状態で熟成させることに関してはいかなる問題も発生していません。いくつかのドメーヌが還元の問題に突き当たるのは、おそらくSO2の過剰な添加に由来するものです。私のドメーヌでは、決してポンプを使ってワインを取扱うことはありません。瓶詰め前の最後の澱引きの際にもポンプは使わず、樽の上部の穴からの空気圧によって、樽内からワインを押し出すという自然な方法で行っています。この方法だと酸化を防止するための処置はごく僅かで済み、ワインのアロマのすべてを(揮発性のアロマさえも)失うことなくワインのなかに残すことができるのです。私にとって、ワインのアロマはワインの熟成過程における最優先事項の1つです。ワインはシュール・リーの状態で熟成させることによって、新鮮な果物のアロマをしっかりと残しながらも、焙煎や燻した香り、トーストなどのトリュフに誓うような香りもより多く残すことができるのです。

IZM: 捕酒は行っているのですか?

JLR: もちろん18ヶ月の熟成のあいだ、捕酒は定期的に行われます。しかし、多くても1週間に1回です。

IZM: あなたは毎年ACブルゴーニュを除いて除梗していませんが、なぜ除梗しないのですか?醸造学的な観点からその理由を教えてください。

JLR: 一言で言うと、果梗は種から得られるタンニンとは異なる補完性のあるタンニンをワインに与え、素材に敬意を払って醸造することによって、ワインのアロマが一層複雑になるからです。しかし、果梗を残して醸造するためには、果梗がしっかり熟すのを確かめて収穫を待つこと。それから、機械を使用するピジュアージュ(櫂入れ)は行わず、ピジャージュは足で行う必要があります。果梗を残して醸造するより具体的なメリットは以下の通りです:
・アルコール発酵中における果梗の役割は、急激な温度上昇を抑え、固体と液体のあいだの良好なバランスを取ってくれること。

・時期尚早な酸化を引き起こす機械による冷却、ポンピング・オーバー、激しい攪拌などを行わないことによって、揮発性の最も高いアロマを保持し、ワインに固定することができる。

・アルコール発酵の期間がより長くなり、最上の抽出と異なる成分(タンニン、色素、ポリフェノールなど)のあいだの自然の結合が可能になる。

・除梗をする造り手たちは、しばしば、果梗に含まれる自然のタンニンの不足を、商店から購入したオークのタンニン(注:樽ということではなく、添加物としての「オークのタンニン」を加えることによって補おうとします。これは認められた行為ですが、ブドウに由来しない成分を加えることは、ワインのバランスにおける安定化と、調和あるワインの融合化を難しくしてしまいます。

・手作業(ここれも機械は使わない)の液抜きの際、果梗という「植物性の塊」が自然なフィルターとなって大きい澱や沈殿物を捕らえるため、より清澄度の高いフリーラン・ワインの排出が促され、最上の圧搾が可能になります。

・この最初の段階からワインの清澄度が高いため、熟成後の無清澄・無濾過の瓶詰めが容易になります。
これは、私の先祖や父母のノウハウの遺産と日々の観察、再検討の成果です。しかし、いつか私が日本を訪れて、貴社(IZM)やワインを愛する貴社のお客様に会うときのために、ここですべての秘密をあかすのは止めておきましょう(笑)。

IZM: 近年ブルゴーニュでは、ブドウ畑の耕耘に馬が使われていますが、このことについてどう思いますか?

リュー・デ・グラン・クリュで樽を運ぶライヤール JLR: DRCでブドウ畑に牽引馬が再導入された際の面白いエピソードについてお話しましょう。1990年代の後半、DRCの共同所有者であるオベール・ド・ヴィレーヌが私にこう言ったのです:「おい、ジャン=ルイ、わしはロマネ・コンティの畑で馬が耕耘されるのを見るまでは引退せんぞ。」そこで、わたしはボーヌの農業専門教育センター(注:ジャン=ルイ・ライヤールが教授を務める学校)と共同で、100あまりのドメーヌを招き、耕耘馬のデモンストレーションを畑で行うことを企画したのです。デモンストレーションの当日、ヴォーヌ・ロマネ“ボー・モン”の畑の土は濡れていて、見学者は容易に近づけませんでした。私はすぐにヴィレーヌの下に駆けつけ、そのことを伝えると、彼は「ロマネ・コンティの畑に行って良い。」と言ってくれたのです。
 2000年のその日、50人あまりの造り手が見学に来ました。馬のデモンストレーションは、私の学校の同僚で、オーソワ牽引馬の飼育家であるアベル・ビズアールと、生涯DRCで働き、1953年にDRCで働き始めた時、耕耘の仕事を担当し、近代的なトラクターに切り替わる前のDRC最後の馬で作業を行う機会に恵まれた私の父とで行われました。それは、当時72歳を迎えた父への私からの素晴らしい贈り物となりました。
 この馬による牽引への回帰の有用性は、土が押し固められるのを少なくすることと、有機農法への移行の継続性です。以来、有機農法もしくはバイオダイナミック農法でブドウ栽培をしているドメーヌの多くが、畑に馬を入れることを再び学び始めています。ボーヌの農業専門教育センターでは、若い造り手やその他の人たちに、馬による耕耘の教育を行ってますが、その名声はいまや国境を越えています。なぜなら、教授であるアベル・ビズアールは、スペインやドイツにまで行って指導を行っているからです。
*画像左上:“リューデ・グラン・クリュ”で樽を運ぶライヤール

 DRCは、ロマネ・コンティ、ラ・ターシュ、リシュブールなどの畑を馬で耕耘するために、専属の御者を馬とともに雇っています。また、それらの馬のための特別な厩舎の改修も計画されています。他のブルゴーニュの幾つかのドメーヌも、畑の耕耘のために、牽引馬の御者を雇っています。その他のドメーヌでは、馬による耕耘請負業者と契約を結び、作業を行っています。こうして、馬による耕耘を行う幾つかの会社が設立されたのです。


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