HOME >> 生産者情報 >> ポデーレ・モナステロ(イタリア/トスカーナ州)
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↓INDEX↓
◆ドメーヌの概要◆
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◆ラ・ピネタと
カンパナイオの区画図◆
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◆『デカンター '09年5月号』
掲載記事◆
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◆アレッサンドロ
・チェライの経歴◆
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◆アレッサンドロ
・チェライ インタビュー◆
(2018年6月実施)
◆アレッサンドロ
・チェライ インタビュー◆
(2009年7月実施)
◆各キュヴェの詳細◆

アレッサンドロ・チェライ(カステラーレ・ディ・カステリーナ,キァンティ)
高名なイタリアのコンサルタント,ジャコモ・タキス推薦

 カステラーレはキァンティを牽引する生産者の1つで,“イ・ソディ・ディ・サン・ニッコロ・サンジョヴェーゼ”と“マルヴァジア・ネラ”で有名である。これらのワインの立役者であるチェライはこれまで舞台裏で慎重に控えていた。しかしながら,1996年からはカステラーレと同時にシシリアのフエディ・デル・ピスチョットでもワインメーカー兼ディレクターの座についている。彼はまた,マレンマに位置するカステラーレとドメーヌ・バロン・デ・ロートシルト=ラフィットのジョイント・ヴェンチャー,ロッカ・ディ・フラッシネッロのディレクター兼ワインメーカーでもある。アレッサンドロはそこでクリスチャン・ル・ソメールと共同でワイン造りを行っている。
「地元の品種はその土地のワイン生産の歴史の一部であるため重要視されるべきだが,その土地で目立った功績を挙げ,そのテロワールを最も良く表現する品種を探すことは極めて困難だ」
とチェライ。彼の哲学は“ラ・ピネタ”とカベルネとメルローのブレンドのキュヴェ、“カンパナイオ”を手がける自身のエステート,ポデーレ・モナステロの仕事に掲げられている。
「アレッサンドロは私が深く尊敬するワインメーカーである。カステラーレ・ディ・カステリーナの“サンジョヴェート”の素晴らしい功績以外にも自身のワイナリーを持ち,美しく濃厚でストラクチャーのあるピノ・ノワール“ラ・ピネタ”を造っている。」
とタキスは語った。
1970年: カステリーナ・イン・キァンティ生まれ。シエナ・ワインメーカー・スクール及びフローレンス大学化学科卒業。
1990-1996年: ロッカ・デッレ・マチエの技術監督。
1996年以降: カステラーレ・ディ・カステリーナ、ロッカ・ディ・フラッシネッロ及びフエディ・デル・ピスチオット総支配人兼ワインメーカー。
2000年: ポデーレ・モナステロを設立。
2009年7月実施

※出水商事=IZM,アレッサンドロ・チェライ=AC


IZM: まずは貴方の経歴について教えて下さい。

AC: 私はカステリーナ・イン・キァンティで生まれ育ちました。現在46歳。シエナのワインメーカー・スクールとフローレンス大学の化学科を卒業しています。1990年から1996年まではカステリーナ・イン・キァンティのロッカ・デッレ・マチエの技術監督を務め,1996年から現在に至るまで,カステラーレ・ディ・カステリーナ,ロッカ・ディ・フラッシネッロ,そしてフエディ・デル・ピスチオットの総支配人及びワインメーカーを兼任しています。そして2000年にポデーレ・モナステロを設立,所有する3ヘクタールの畑で2つのワインを造っています。

IZM: 3つのワイナリーの総支配人とワインメーカーを兼務しながら,カステリーナ・イン・キァンティにご自分の畑を持つことを決めたのは何故ですか? AC: 我々チェライ一族がカステリーナ・イン・キァンティに昔から土地を所有していたのです。(地図を示しながら)ちょうどこの一帯全てがチェライ一族の所有地なのです。2000年から2001年にかけて親族で土地の分与がされ、その時に私が手に入れたのが現在のポデーレ・モナステロの土地です。

IZM: 何故、ピノ・ノワールを栽培することにしたのですか?

AC: それについては面白い話があります。夫婦にはたまにあることですが,ある夏の夕方,妻と喧嘩をして私は頭を冷やそうと外に出ました。そして,ちょうど今ラ・ピネタがある場所に向かってとぼとぼと歩き,畑に着いた時にとても寒いことに気づいたのです。土壌も石灰質ということもあり,ピノ・ノワールを植えることを直感的に思い立ちました。その後,私は地質調査を行い,自分で植樹も行いました。あの時喧嘩をしてくれた妻に今まで何度も感謝の言葉を伝えていますよ(笑)。

IZM: ポデーレ・モナステロの畑とテロワールについて詳しく教えて下さい。

AC:(地図を示しながら)ここがラ・ピネタの畑。そして少し離れたここがカンパナイオの畑です。地図では小さくて見えませんが,ラ・ピネタとカンパナイオの間にはアラビア川という小川が流れています。ラ・ピネタはその小川に沿った谷の北の斜面にあり,カンパナイオは南を向いた斜面にあります。特にラ・ピネタの方は小川に沿って畑があるため,周りの土地よりも気温が低い冷涼なミクロクリマという特徴があります。昼夜の寒暖差も大きく(夏は昼35度、夜15度),そのおかげでピノ・ノワールの栽培が可能になったのです。ラ・ピネタの畑は東向きで,斜面と垂直に畝が立てられています。一方,カンパナイオは丘のほぼ頂上にあり,南向きの畑です。メディオインパストと呼ばれる石灰と砂質の土壌で,ピネタと同様石がとても多い区画です。ピネタとカンパナイオの間は距離にして僅か500-600mですが,テロワールも土壌も全く違います。そういう意味では,ラ・ピネタの区画はピノ・ノワールの栽培が可能なトスカーナでも極めて稀なミクロクリマと言えるでしょう。

IZM: ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティの苗木家であるギョームからクローンを購入されたそうですが,そのいきさつを教えて下さい。また,どのようなクローンを植樹されたのですか?

AC: 仕事上,ギョームのことはずっと前から知っていました。それにクローン777といった最上のピノ・ノワールのクローンを持っていることも知っていました。2001年に植樹したクローンは,ピノ・ノワールは777,カベルネ・ソーヴィニヨンは169,メルローは181です。すべてフレンチ・クローンですが,この土地にとても良く適しています。カベルネとメルローのクローンについては,これまで様々なクローンを見てきて,これらが良いと確信していました。収量が比較的多く,凝縮感のあるクローンです。

IZM: 同じ畑に1つだけのクローンを植樹するのはリスクが大きいと言われます。例えば病害虫が発生した場合,複数のクローンであれば全滅は避けられるが,単一クローンだとすべてのブドウが被害に合ってしまう可能性が大きいということですが,いかが思いますか?

AC: ピノ・ノワールのクローン777はロマネ・コンティで栽培されているクローンです。ロマネ・コンティも777しか植えられていないと聞いています。実はラ・ピネタの西側にクルミの林があるのですが,この場所も小川沿いの冷涼なミクロクリマなので,ここにもピノ・ノワールを植樹しようと思っています。ですからピノ・ノワールの総栽培面積は最終的には2.5ヘクタールになる予定です。もしかしたら,新しい区画には777以外のクローンを植樹するかもしれません。

IZM: 有機やバイオダイナミック農法に興味はありますか?また,それらを行う予定はありますか?

AC: 化学物質を使わないビオロジック農法を実践しています。ボルドー液のみ使用しています。また,害虫のバッタの幼虫は本当に恐ろしく,果実に穴を開けて果汁を吸いだしてしまうので,幼虫を発見したら直ぐにバチルス・チューリンゲンシス()を散布します。

Bacillus thuringiensis バチルス・チューリンゲンシス
土壌中に生活している昆虫病原菌の一種で,自然界に広く分布している。略称としてBtまたは、Bt細菌ともいう。Btには様々な系統があり,その系統毎に異なった種類の害虫(昆虫)に対し殺虫効果のあるタンパク質が含まれ,葉とともに虫が食べることにより殺虫効果を発揮するため,人体や環境に安全な生物農薬として有機栽培やバイオダイナミックで用いられている。

IZM: 収穫時にブドウ樹に残す房数が2-3房と非常に少ないのですが,栽培のどの段階で房数を制限しているのですか?

AC: 剪定の際には5-6芽を残し。グリーン・ハーヴェストの際に良い2房を残します。大体中央の芽が良い房に生長します。



IZM: 貴方の手は頑丈で,正に農業に従事している人の手をしていますね。3つのワイナリーの総支配人とワインメーカーを兼務しながら,自分の畑にも毎日行かれているのですか?

AC: はい,もちろんです。毎日畑に出ています。ブドウ樹は自分の子供のようなもので,本当の息子と娘に「お前たちには沢山の兄弟がいるんだよ」とよく話しています(笑)。




IZM: 2008年物の出来と今年,2009年の天候について教えて下さい。

AC: 2008年物は私が理想とするワインに非常に近い出来です。2007年と比べるとボディは少ないけれども果実味に富み,すでに丸みと柔らかさを備えたワインとなっています。これはラ・ピネタだけでなく,カンパナイオにも言える特質です。ピノ・ノワールは若いうちから柔らかいワインでなければならないと思っています。2008年物はこれまでで最高の出来と言っても良いでしょう。樽熟成を短めにしたのは,果実味を保つためです。2009年のこれまでの天候は理想的なものです。まだ2009年について話すには早すぎますが,良い天候が続くことを祈っています。 IZM: 先日,デカンター誌にジャコモ・タキス推薦のワインメーカーとして大きく紹介されていましたが,ジャコモ・タキスと一緒に仕事をしたことはありますか? AC: 一緒に働いたことはありません。学生の時にタキスの講義を何度か聴き,その縁で友人となりました。これまで何度か一緒にワインの試飲をしたことはあります。とても光栄なことに,彼は私のピノ・ノワールをイタリア・ワインのベストの1つと言ってくれています。

IZM: 貴方はロッカ・ディ・フラッシネッロやカステラーレ・ディ・カステリーナ等のワインも手がけていますが,ご自身のモナステロのワインとそれらのワインのスタイルに特別な変化をつけていますか?

AC: ワインメーカーの仕事はテロワールの個性を表したその土地のワインを造ることです。フラッシネッロもカステラーレもモナステロもそれぞれユニークな唯一のワインになるのです。 IZM: ご自身のワイナリーを持って,その他の生産者のワインも手がけているとなると,、とてもお忙しいですよね。休みはありますか? AC: ほとんど休みはありません。今年は8月初めに2日程度しか取れないと思います。でもこれも夢のためです。私には夢があります(「I have a dream. One day・・・」まるでマーティン・ルーサー・キングのように重々しくもニコニコしながら)。いつの日にかロマネ・コンティのような偉大なピノ・ノワールのワインを造りたいのです。15年後くらいには少量で良いから,価値の高いロマネ・コンティのようなワインを造っていたいと思います。だから,今,頑張ってロバート・パーカーから高得点を取るよう努力します!

IZM: ロバート・パーカーと言えば,貴方のワインはワイン・アドヴォケイトやワイン・スペクテーターで評価されていますが,それらの評価誌についてはどう思いますか?

AC: ワイン・アドヴォケイトに寄稿するアントニオ・ガローニは知り合いで,素晴らしいテイスターだと思っています。今度2008年物を試飲するためにモナステロに来る予定です。スペクテーターのサックリング氏もモナステロの2007ヴィンテージを試飲しました。国内の専門誌では,ガンベロ・ロッソが今度2007年を試飲予定です。

IZM: イタリアのワイン評論家はトスカーナのピノ・ノワールをどう見ているのでしょうか?

AC: イタリアの評論家はトスカーナのピノ・ノワールというだけで敬遠しがちと言えるでしょう。

IZM: イタリアのロマネ・コンティを造るなら,イタリアのモンラッシェも目指してはどうですか?今後シャルドネや他の品種を植える予定はありますか?

AC: そのつもりはありません。ピノ・ノワールで勝負したいと思います。

IZM: ポデーレ・モナステロと,ラ・ピネタ,そしてカンパナイオの意味を教えて下さい。

AC: モナステロは修道院の意味で,昔,この土地に修道院があったからこの名をつけました。ラ・ピネタはその名の通り,松から因んでいます。この区画が松林に囲まれているからです。カンパナイオについては,昔,礼拝の時間などを知らせるために教会の鐘を鳴らす人がいて,その人たちをカンパナイオと呼んでいたことに由来します。教会は報酬としてカンパナイオたちに石の多い貧しい土地を与えました。その土地(Sodo del Campanaio)が今のカンパナイオの地であるため,こう命名しました。ラベルに描かれているのは鐘の建物です。

IZM: 貴方がイタリアで好きな造り手は誰ですか?また,世界のピノ・ノワールの生産者で最も尊敬する人はいますか?これまで飲んだワインで,心に残るワインがありましたら,教えて下さい。

AC: 私にとって世界最高のワインメーカーと言えばジャコモ・タキスです。ロマネ・コンティの1980は素晴らしかったことを覚えています。

IZM: 有名なワイン・ショップやレストラン,ホテルなどで貴方のワインをオン・リストしているところを教えて下さい。また,貴方のワインを特に好む著名なソムリエやシェフ,有名人はいますか?

AC: ダル・ペスカトーレ(ミシュラン3ツ星),サン・ピエトロ(ニューヨーク),ヴィネリア・ペルクッシ(ブラジル/サンパウロ)などです。
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