HOME >> 生産者情報 >> カシーナ・ディ・コルニア(イタリア/トスカーナ州)
↓INDEX↓
ビオロジック農法
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ボルドー液(硫酸銅)の完全なる排除
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神秘的な慎重材、
自然への帰依
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“新調剤”とボルドー液使用との違い
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商品ラインナップ

 カシーナ・ディ・コルニアは、キャンティ・クラッシコ地区の中心、カステリーナ・イン・キャンティの丘陵地に位置するワイナリー。1980年、アントワーヌ・ルギンビュール Antoine Luginbuhlと妻のフランシーヌ・デュフォール Francine Dufourによって設立された。設立当初より、すべてのブドウ畑でビオロジックを実践し、1983年にはイチェア ICEAの認証を取得している。所有する24ヘクタールのうち、6ヘクタールでブドウ栽培を行っている。粘土石灰質土壌からフル・ボディでタンニン分の豊かなワインが生まれる。



 オーナーのアントワーヌ・ルギンビュールは、1951年、スイスのジュネーブ近郊の代々農業を営む家庭に生まれ、幼少期より自然や家畜に囲まれて育った。彼の曾祖父は農業を営む傍ら、医師として医療にも従事していた経歴があり、当時ペニシリンの効能がまだ発見されていなかった頃、野草やチーズのカビ(ペニシリンの一種)を利用したホメオパシー Homeopathy(同毒療法)による感染症の治療を行っていた。自然の力とバランスを尊重し環境に配慮することは、ルギンビュール家に代々伝わる根本的な倫理観である。アントワーヌ・ルギンビュールは、美しい自然に恵まれたカステリーナの丘陵地でこの倫理観を真摯に実践すべく、ビオロジックに基づいたブドウ栽培とワイン造りを確立した。

 農業は常に土壌の豊かさを保持し、さらに増していく心がけ。これは生産の基本で、農業学の中でもそのように謳われている。最初の化学肥料の使用は土壌の肥沃度を増す試み。そして生産性を上げるために使われるようになった。しかし、この化学肥料の使用は基本的支えである土壌を変え、直接ブドウ樹に影響を及ぼす。

 アントワーヌ・ルギンビュールは、「私はブドウ栽培からワイン醸造まで自分で行いたい。そして自然への帰依を。」という情熱を元に、ビオロジック農法という伝統農法であるビオロジックを行っている。ルギンビュールは、また、1995年に立ち上げられた有機ワイン農家の組合で、11生産者が名を連ねるトゥリミッリ Trimilliiのメンバーでもある。
(談:オーナー、アントワーヌ・ルギンビュール)

 栽培学を修めていた頃に勉強していた生物学、土壌学、昆虫学の知識を使いました。生物は土壌の活力を保ち、増大させる手助けとなる仕組みを作っています。このことからビオロジック農法において、堆肥もナチュラルな肥料を使うことを試み、根から吸収されうる土壌内の微生物、バクテリア、菌類、昆虫類で変換が可能になります。また、殺虫剤における昆虫対策についても基本的に同じで、もし病気を引き起こす昆虫がいれば天敵、「例えばそれを食べる昆虫」を探すことが可能になります。そして、寄生する天敵を味方につける戦略を試します。例えば、ブドウ畑に下草、特にイネ科の植物を生やすことはブドウ畑に生息する天敵の昆虫にとって好ましい状況なので、最終的にバランスの取れた状況を作ることができ、費用も安く済みます。堆肥はナチュラルなもの、すなわち、牛、馬、鶏の糞を混ぜて作った堆肥を採用しています。この堆肥こそ、土中で生息する有益な微生物を豊かにする栄養成分をもたらすものであり、25年前から「ビオロジックの認証」を受けているものなのです。


 主に「ベト病」の症状はブドウ樹に対する菌性病害です。これにかかると、結果としてブドウの果実の熟成を遅らせるとともに、腐敗が生じ、良質かつ健全なブドウの収穫が見込めなくなります。そこで、他の生産者たちは「ボルドー液」と呼ばれる散布剤を撒いています。ボルドー液 Bordeaux Mixtureは、硫酸銅と生石灰の水溶液なのですが、その「硫酸銅」が問題視されています。散布する時期は湿度の高くなる5-8月。雨が降り、晴れて気温が上昇すると非常に湿度が高くなり、菌が発生しやすくなります。ボルドー液はドライな状態にするために散布されるのです。この「硫酸銅」は非常に攻撃的で、葉を徹底的に乾かしてしまいます。この勢いを中和させるために、「生石灰」で補い、極度の乾燥により葉が焼けてしまうのを防ぐのと同時に、雨が降った時にも流れ落ちないようにする効果があります。ただし、この「硫酸銅」は先にも述べたように、重く攻撃的な金属なので、土壌の活力源となる微生物やミミズ、昆虫に対して有害です。土壌への累積が進むと、畑に生息する生き物、後にワイン醸造の発酵工程で必要不可欠となる「野生酵母」までも失ってしまうことに繋がります。

 他の地域同様トスカーナ地方においても、ベト病を含む病害対策はブドウ栽培家にとって永遠の課題です。トスカーナ地方の生産者の多くはカビ対策として硫酸銅を大量に(1ヘクタールあたりの年間使用量10キロ程度)使用しています。また、ビオロジックやビオディナミを実践する生産者も、許容範囲内で(ビオロジックの枠内で許容されている使用量は1ヘクタールあたり年間3キロまで)硫酸銅を使用しています。しかし、硫酸銅によってもたらされる銅が土壌に蓄積し、汚染することが問題視されています。ルギンビュールは、「事実、硫酸銅が50-60年間使用されていたブドウ畑の土壌は完全に死んでしまっている」と主張しています。微生物などが死滅し、活力と自然のサイクルを失った土壌ではブドウの生長は見込めません。

 そこでカシーナ・ディ・コルニアでは、設立当初の1980年から95年までの15年間、ボルドー液中の硫酸銅の使用量を通常使用量の10分の1にまで抑えていました。また、1996年からは、ボルドー液の代わりに、粘土を主原料とするドイツ製の調剤(粘土、ハーブなどの植物の調合液、酵母、柑橘類由来の酸を混合したもの)を使用、銅を一切使用することなくベト病などのカビ対策に成功しています。現在我々の知る限り、銅を一切使用することなくカビ対策に成功している生産者は、トスカーナの小さな生産者、カシーナ・ディ・コルニア以外には認められません。


 ペロノスポラ(銅に弱い菌)に抵抗する違う方法を試すべく、この“ドイツ製の新調剤”を使用しました。成分としてハーブは珪素を豊かに含むスギナを菌対策に用いています。酵母は普通のビール酵母に砂糖を加え、ベド病の胞子を消滅させています(公的研究結果ではないが、コルニアの土壌では効力が発揮されているよう)。柑橘系の酸はクエン酸で、葉の表面のPhを変えることによってベト病の菌をさらに消滅させ、酵母とともに働きかける役割があります。この処置を一番湿度が高くなる5-8月に。3-6回散布する。この“新調剤”によってカシーナ・ディ・コルニアでは1996年以来、カビ対策として一般的に使用される硫酸銅を一切使用していません。また、創業以来26年間、合成殺虫剤も一切使用していません。

 「殺虫剤?一切, 使用したことがありません。なぜって?それは、殺虫剤の使用に反対ということではなく、ただ単に使用する必要性がないからです」と、アントワーヌ・ルギンビュールは自分のブドウ畑が健全であることを強調しています。「毎日、ブドウ畑に出てブドウ樹の葉、花、実の全生育サイクルを注意深く見守り、ブドウ樹と共存する雑草、昆虫類などにも注意を払います。ブドウ畑を本来あるべき自然界の姿に戻すことで、あらゆる自然の力が調和して均衡が取れ、土壌とブドウ樹は活性化し、自然に病気に対する免疫力を持つようになるのです。従って、化学物質などを使用する必要はありません」と。


 “新調剤”とボルドー液使用によるワインの味わいの差はありません。
 大きな差は生きた土壌か否か。農業、そして更に有機農業を行う時、健康な畑、土壌、土壌の活力、栽培、その栽培における虫・菌対策全てに働きかけなければならないのです。うまくバランスの取れた状態にすることに成功したら、病気も減ります。手を加える必要も少なくなりますし、穏やかな処置ができます。ブドウの苗木に必要不可欠な栄養分を供給するためには、土壌の活力が重要です。すなわち、動物、昆虫、バクテリアなどが健全に存在する土壌である・・・ということです。

 単純に私たち人間界で例えると、私たちが病気の時、仮に腎臓が悪いとして、そこで医者から腎臓をケアする薬を入手します。これで腎臓は回復しますが、他の臓器、例えば肝臓を壊すことに繋がります。事実は、2つのことを一緒にはできないということです。1つを解決しようとすれば、そこから派生しうる他の問題についても考えなければならないのです。よって常に健康でバランスの良いブドウが、良いワインを造る原動力となります。

 ビオロジックに傾倒した経緯を、アントワーヌ・ルギンビュールは次のように説明しています:
・・・農薬や化学肥料のおかげで、昔に比べ、農業の生産性ははるかに向上したと言えよう。産業革命が起こり、工業が躍進したのと同様、農業においても、いわゆる大量生産、インダストリアリゼーションが進んでいる。大量の農薬、大量の化学肥料の使用が、農業における大量生産を可能にしているのだ。あらゆる産業にかかわる資本家は、これによってさらに多くの富を得るだろう。また、農家の懐も潤うだろう。しかし、こんな危険なことを続けていたら、我々農民が近い将来支払わなければならない代償は多大なものになると危惧している。カシーナ・ディ・コルニア設立以来、私はビオロジックにこだわっている。それは人体の健康への配慮ということではなく、当初、それが私にとっては政治的なメッセージを伝えるための手段だったからだ。すなわち、私は農業における産業の介入、大量生産を否定する。従って、大領生産を可能にする化学肥料、化学薬品の使用を一切否定する。もちろん、化学薬品を使用しないことの利点は多くあるが、それ自体、ビオロジックを選んだ私の哲学ではない。私がビオロジックを実践し、成功を収めることで、他の農民も私に追随してくれることを願っている。そして、農民が産業化の呪縛と利益のみを貪欲に追求する資本家たちから解放され、ひいては自然と世界を助けることになれば良いと願ってやまない。私は代々農業を営む家系に生まれた。現在も、これから先も、農業人だ。自分でブドウ畑を耕し、ブドウ樹を大切に育て、天の恵みに感謝し、すばらしいワインを造り続けたい。
 
Rosso Toscano l'Amaranto IGT, Rosso
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