フランスでちょっとした物議を醸すリュー・ディ、モンコキュ。コキュCocuとは、フランス語で“妻にだまされた夫”を意味するためだ。
ドメーヌでは、別称ラ・フェルテLa Ferte(モンコキュが所在する村の名前)のラベルを用意しているほど、“コキュ”という言葉はインパクトがある。モンコキュは歴としたリュー・ディ名で、土地台帳には古くから載り、その分長い間議論の的にされてきた。
しかしセンセーショナルなのは名前だけではない。このリュー・ディはニッチな小アペラシオン・ルイィ(200ha)で、他とは一線を画してきた。ルイィの大部分が粘土石灰、キンメリジャン土壌であるのに対し、ここはリッチな珪土Siliceの土壌なのである。
粘土石灰土壌がワインにフレッシュさを与えるのに対し、珪質土壌は一般的にワインの酸を和らげ、良好年に収穫を最高のタイミングまで待つと、ワインはリッチで粘性豊かな仕上がりとなる。
ボルドーの著名シャトーで研鑽を積み、栽培・醸造哲学を培った現当主のマチューは、敢えて他ドメーヌより10〜15日も遅い9月末にソーヴィニョンの収穫を行う。ブドウの熟成のレベルは最高に達している。熟したソーヴィニョンを待つのは、1年熟成させて、より粘性が高くリッチなソーヴィニョンに仕上げるためだ。型にはまらないソーヴィニョン造りを選んだマチュー・マビヨにとっては理想のテロワールだったのだ。現在モンコキュを所有するのはドメーヌ・マビヨとあと1生産者のみ。その大部分にあたる3.79haをマビヨが所有している。『ラ・ルヴュ・デュ・ヴァン・ド・フランス』2015年2月号の「ロワールの卓越したソーヴィニョン75選」では、モン・コキュ2013とラ・フェルテ2010の2つが堂々ランクイン。
伝統を守りながらも、現代の消費者のニーズに合ったワイン造りに挑み、モダンなキュヴェをリリースし続けている。
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◆AOCルイィ◆
ルイィで使用が認められている品種はソーヴィニョン・ブラン、ピノ・ノワール、ピノ・グリの3種。1937年のデクレでソーヴィニョン・ブラン種の白ワインにアペラシオン・ルイィが認められた。続いて1961年に赤ワイン(ピノ・ノワール)とロゼ(ピノ・グリ単一もしくは、補助品種ピノ・ノワールのアッサンブラージュ)が認定された。
栽培面積200haに広がるロワールの中では小さいアペラシオン。
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ドメーヌ・データ |
ドメーヌ名: | ドメーヌ・マビヨ/DOMAINE MABILLOT |
当主: | マチューとルノー・マビヨ兄弟/ Matthieu & Renaud MABILLOT |
栽培面積: | 8.64ha |
栽培品種: | ソーヴィニョン・ブラン(4.43ha)、ピノ・ノワール(3.12ha)、
ピノ・グリ(1ha) |
土壌: | キンメリジャン時代の牡蠣の化石が層になった粘土石灰、 珪土質
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栽培方法: | リュット・レゾネ栽培
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年間平均生産量: | 50,000本
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流通先: | フランスのカヴィスト、ホテル、レストラン※。
イギリス、オランダ、ベルギー、日本。
※三ツ星レストラン「ルイ・キャーンズ」、「ル・ムーリス」のシェフ・ソムリエを歴任したニコラ・ルビュNicolas Rebutの目に留まり、Fleurs de Mets、Coq Rico、Toumieu、Hotel du Collectionneur(5ツ星ホテル)、La Place de Mougie、Claude Collio、Mini Palaisでオンリスト。大改装を経て2016年にリニューアルオープンしたオテル・リッツ・パリ Hotel Ritzでもオンリスト。
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◆経歴◆
90年代に創設された家族ドメーヌ。穀物栽培業を営んでいたアラン・マビヨAlain Mabillotが、1988年にラ・フェルテ村に位置するリュー・ディ、モンコキュを購入しブドウ樹を植樹。91年に初ヴィンテージをリリースした。現在はアランの2人の息子が後を継ぎ、長男マチューがブドウ栽培・ワイン醸造、次男のルノーが穀物(麦、大麦、菜種、レンズ豆、向日葵)栽培を営んでいる。
マチュー(1979年生、写真右)は14〜5歳の頃から父を手伝い栽培、醸造に携わってきた。偉大なワイン産地ボルドーに強い関心を持ち、ボルドーのリセ・ヴィティコール・ド・ブランクフォールLycee Viticole de Blanquefort へ進み、栽培・醸造の高等技術者免状(BTS:Brevet de Technicien Superieur)を修めた。さらに2年間、商業学科で学んだ後、メドック格付け第5級シャトー・ランシュ・バージュChateau Lynch Bagesで修業。格付け5級ながら2級に匹敵する実力はスーパーセカンドとも呼ばれるランシュ・バージュで、バリック熟成、リュット・レゾネ、収穫、あらゆる醸造・栽培技術面について学び、多大な影響を受けた。そしてワイン造りのみに留まらずワインに関わる業界全体にも目を向けたマチューは、樽のタランソー、ミカサガラス、クリスタル・ダルク社で6年間営業を経験しマーケティングを徹底的に学んだ。こうして通算10年以上を過ごしたボルドーでは、シャトー・ラフィット・ロートシルトChateau Lafite-Rothschildの技術ディレクターを筆頭に、サン・テミリオン・プルミエ・グラン・クリュ・クラッセ (B)格付けシャトーのボーセジュール・ベコChateau Beausejour-Becot、シャトー・ド・フューザルChateau de Fieuzalの当主などと交流を深め、リセ時代の学友であるジェラルド・ガビエGerald Gabillet(シャトー・アンジェリュス当主)やフレデリック・フェィFrederic Faye(シャトー・フィジャック当主)とは、現在も頻繁に会いワイン造りに於いても常に意見を交し合っている。ボルドーのみならず、海外のブドウ栽培、ワイン造りにも興味を持ち、アメリカ・ナパのケイン・ビンヤーズCain Vineyardや、パーカーが99点を連発する南オーストラリア州バロッサ・ヴァレーにあるオーストラリア最高峰トルブレックTorbreck Wineryでさらなる修行を重ねた。2008年に修行を終え、家業のドメーヌに参画した。父アランが2012ヴィンテージの醸造を最後に引退し、現在はマチューが当主を務める。
一方、弟のルノーは機械学を専門とし、アメリカのパッケージ会社でエンジニアとして勤めた後、2013年にドメーヌに参画。兄と共に家業の経営に携わる。
現代の消費者が求めるワイン、アペリティフにふさわしいワインなど、ニーズに合ったモダンなキュヴェをリリースしている。フランス国内外のワインガイド、雑誌に多数掲載される注目のドメーヌ。
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◆栽培・醸造 ◆
ソーヴィニョン、ピノ・ノワール、ピノ・グリが栽培されるブドウ園はルイィの異なるテロワールに位置する。ドメーヌの所有する6つのクリマ(ラ・フェルテla Ferte、モンコキュMontcocu、レ・リニles Lignis、レ・コンジュles Conges、レ・トミエールles Thaumiers、レ・コワニョンles Coignons)では、テロワールの永続、環境保護とワインの品質、食への喜びを保証するため、除草剤、化学肥料不使用。堆肥はビオ生産者らに使用されている、地中の有機物・微生物の活性を促す植物主体のコンポストを使用。耕耘は年に3〜5回、耕運機で行う。15年以上、畝と畝の間に下草を生やす草生栽培とリュット・レゾネ栽培を貫いている。またビオディナミにも関心を持ち、アブラ虫対策、土壌バランスを取るためにイラクサの水肥、牛糞詰めた牛の角を使用するなど可能な範囲で採用している。2008年(マチュー参画後)以降、他ドメーヌより10〜15日も遅い9月末にソーヴィニョンの収穫を行う。ブドウの熟成のレベルが最高に達したソーヴィニョンを約12ヶ月熟成させ、キュヴェモン・コキュとル・オー・ド・ラ・パントについては特に、シュール・リーでの熟成時間を長く、より粘性が高くリッチなソーヴィニョンに仕上げる。赤ワインに関しては、ピジャージュとルモンタージュをコントロールしながら、抽出を制限する。発酵が早まらぬよう、可能な限り静かに熟成させる。
生産の主は白ワイン。その他、赤、ロゼ・ワインを年間トータル約50,000本リリース。
写真:マチューとルノー・マビヨ兄弟
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◆キュヴェの詳細◆
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Reuilly (AOC), Blanc/ルイィ 白
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Reuilly (AOC), Rose/ルイィ ロゼ
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Reuilly (AOC), Rouge/ルイィ 赤
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Mont Cocu AOC Reuilly, Blanc/モン・コキュ 白
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Mont Cocu AOC Reuilly, Rouge/モン・コキュ 赤
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Le Haut de la Pente AOC Reuilly, Blanc/ル・オー・ド・ラ・パント 白
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