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◆ピエール・クロスの哲学◆
『ブドウを育てるのにいんちき万能薬は使わない。カーヴに魔法があるわけでもない。
星のことはしばしば思い出しはするが月について話すことは滅多にない。私は地に足がついている。こうしたこと(ビオディナミ)が流行り、もしくは商業的に行われているのを目の前にして、それを観察するだけで十分だ。
私は先祖が置き去りにしたこの素晴らしい遺産を尊重し、愛し、テロワールを感じ、理解するだけだ。
私のボトルにマカロン(メダル受賞シール)を飾る必要もないし、美しいスピーチもいらない。ただ正直であるのみ。』
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◆ドメーヌの概要◆
ドメーヌ・ピエール・クロスは、カルカッソンヌから約15キロにあるバーデン/Badensに位置する。当主のピエール・クロスは元ラグビー選手で、カルカッソンヌ(第一リーグ)でフォワードとして活躍していた。元々祖父のマリウス/Mariusと父のアンリ/Henryはブドウ畑の区画をいくつか所有はしていたが、造ったブドウは共同組合に販売し、本業はバーデンでパン屋をしていた。仕事が好きで、毎朝配達に行き、いつでも町の人にパンを届ける仕事熱心な両親だった。ワインを本格的に造り始めたのはピエールの代からだが、両親からブドウ造りの基礎を学び、何より顧客を一番に考える姿勢を学んだという。
1986年、ピエールが24歳の時に家族が所有していた5ヘクタールの畑を受け継ぎドメーヌを創設。乾燥した乏しい土壌で、中には1905年に植樹したカリニャンが存在していた。1987年が彼の手掛けた最初のヴィンテージとなった。
周囲のドメーヌが機械による近代化した栽培を主流とする中、手摘みによる収穫、低収量、伝統的な醸造を実践。また先祖が残した土地に元々植えられていた古代品種がなじむことは間違いないとの信念を貫き、政治的理由により放置されたミネルヴォアの古代品種の復活を試みた。その際平均収量が200hl/haだった150年前と異なり、25hl/haほどに収量を絞った。ピエールは周囲に変人扱いされながらも自らを「戦うヴィニュロン/Vigneron Militant」と称して闘い続け、遂に古代品種のアリカント、アラモン、ピクプール・ノワール、そしてカリニャンのアッサンブラージュからキュヴェ レ・マレメを完成させた。フランス語で「嫌われ者」を意味するレ・マレメは、このワインができるまでの彼の苦労と信念が感じられる。ピエールの成功を受け、現在ではミネルヴォアで地元の古代品種の植樹を倍増するように依頼を受けているという。
しかし彼の偉業はこれでとどまらない。何より信じられないほど輝かしい功績を収めるのは、トップ・キュヴェのレ・ザスプレだ。15hl/haという脅威の低収量のシラー100%のこのキュヴェは、『アシェット・ワインガイド』で「ク・ド・クール」を9回も獲得しているのだ。しかもその全てが三ツ星とのダブル受賞という前人未到の離れ業を達成した。毎年『アシェット』では、「ミネルヴァの教祖」、「レ・ザスプレは本物の芸術作品」、「ク・ド・クールの数はもう数え切れない」、などと絶賛されている。
また、『アシェット』でレ・ザスプレと「ペア」と称され絶対に飲むべきとされているのがヴィエイユ・ヴィーニュ。1905年に植樹した樹齢100年を超えるカリニャンから造られ、WAでは過去90点を獲得している。カリニャンも「嫌われ者」に分類されるというピエールは、栽培・醸造に最大限の手間をかけ世話することで、特に100年の古樹から表現される素晴らしさを伝えるため、単一品種にこだわったという。
ピエールは古樹を守り、古代品種を植樹する一方で、2000年から新たな挑戦を始めた。ミネルヴァアでシャルドネ、ピノ・ノワール、ネッビオーロ、トゥリガ・ナショナルを植樹したのだ。各地、各国でこれらの品種で造られるワインを飲み、自分でも造ってみたいと思ったのがきっかけだ。これらの品種から造られたワインはその名も「自由(ラ・リベルテ)」。元ラグビー選手らしく、勇ましく前に突き進み続けている。
◆畑・栽培について◆
畑は砂・泥土土壌。乾燥していて石が多く、深さは数十メートルしかない乏しい土壌。ドメーヌの所有面積は約50ヘクタールで、22ヘクタールでブドウを栽培している。その他はオリーヴやアーモンド、トリュフの木の栽培を行っている。
栽培方法はゴブレ式、短梢剪定。シャルドネとネッビオーロはシングル・ギュヨー式で栽培。収穫は手摘みで行う。認証は受けていないが有機栽培を実施しており、農薬、殺虫剤、肥料、その他の科学製品は使用していない。
樹齢100年品種 植樹年
カリニャン | 1905 |
ピクプール・ノワール | 1910 |
ピクプール・ブラン | 1910 |
アリカント | 1927 |
アラモン | 1930 |
1980年から植樹されているAOCミネルヴォア品種
サンソー | |
グルナッシュ・ノワール | |
ムールヴェルド | |
ヴェルメンティーノ | |
ムスカ | |
グルナッシュ | |
2000年から植樹されている品種
ピノ・ノワール | |
シャルドネ | |
ネッビオーロ | |
トウリガ・ナシオナル | |
◆ピエール・クロスのことば◆
アラモン、ピクプール・ノワール、アスピラン…古代品種の植樹について
『十数年以上前に苦しみの中生まれたのが、ラングドックの古代品種であるアリカント、アラモン、ピクプール・ノワール、カリニャンをベースに造られたキュヴェ レ・マレメ(フランス語で「嫌われ者」の意味)。違反として訴訟を受けたり、特に嘲弄され、栽培組合から差別された。
今日、農業技術が発達したおかげで、古代品種の樹を徹底的に選定できるようになり、私たちはアラモン、ピクプール・ノワール、アスピランの若樹を植えることができた。
古代品種の何という仕返し!彼らは、その起源を犠牲にして、近代化された栽培がどんどん支配的になるこの地で、<高貴>と呼ばれる品種のために絶滅させられそうになったのだ。
また私たちの先祖にとっても、何と素晴らしい仕返しができたことか!先祖は私たちほど<ろくでなし>ではなかった。ずっと前からこの乾燥した土地こそ、こうした品種の住家なのだということを理解していた。
最後に、何と素敵な個人的な仕返しだろう・・・。時代を進みすぎてはいけない。なぜならあまりに<先駆者>でありすぎると、流行が訪れ、誰も、特に決定権を持つ者(消費者等)は10年以上前のことは思い出せなくなるからだ。我々が既にそうしてきたように。
このような実験的な<規定外>のブドウを栽培するフランスで唯一のヴィニュロンとして私が周りに迷惑をかけたとしても、また私が極端な人間であったとしても、それは知っていることだが・・・、私は悲しみの精神と感受性の強い魂に支えられているのだと思う。
あなたにとってグラン・ヴァンとは何ですか?
『グラン・ヴァンというと2つのタイプのワインを思い浮かべる。
1つは飲みながら楽しめるワイン。友人は私のロゼを「魔法のロゼ」と呼んだ。友人と騒いで(時に失態もあるが仕方がない)、楽しみながら飲めるワインのことだ。私のキュヴェでは例えばトラディションが当てはまる。もちろん私のワインに限ったことではない。
もう1つは、より構成(骨組み)のしっかりしたワイン。と言っても私は決して高いお金を払わなければ飲めないようなワインは造らない。樹齢100年のカリニャンから造られるワイン(ヴィエイユ・ヴィーニュ)は、地元の料理、例えばカスレ、カモ、ジビエと合わせると絶品だ。偉大なワインでも親しみやすいことが大切だ。』
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◆各キュヴェの詳細◆
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Les Aspres AOC Minervois, Rouge |
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Vieilles Vignes AOC Minervois, Rouge
/ヴィエイユ・ヴィーニュ(ミネルヴォア)赤
==>> 詳細はこちら |
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Le Barthas AOC Minervois, Rouge
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Tradition AOC Minervois, Rouge
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Les Costes Blanc AOC Minervois, Blanc
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