クロ・フォルネリは、ベルギーからコルスに移住したヴァヌッチ Vanucci家によって1928年に設立されたドメーヌ。ヴェルメンティーノ、ニエルッチオ、スキアカレッロ、シラーといった品種を栽培していたが、収穫したブドウは地元の協同組合に売却され、長年、元詰めワインは生産していなかった。現在3代目の女性当主を務めるジョゼ・ヴァヌッチ Josee Vanucciは、バリバリのキャリアウーマンとして2004年までパリのIBMで管理職を務めていた。しかし、同じパリのIBMで知り合った夫のファブリス・クルメール Fabrice Couloumereとともに2005年にパリを離れて家業のドメーヌを継承することを決意、故郷のコルシカのブドウ畑で自身の手によるワイン造りを始めた。ジョゼはボルドー大学で農業技師課程、ディジョン大学でワインMBA課程を専攻し、ドメーヌでは栽培と醸造を担当。一方、商科大学を卒業した夫のファブリスは販売と顧客とのやりとりを担当している。
2人はコルシカ北部では極めて珍しいスキアカレッロ100%の赤ワインや、コート・ド・ボーヌの白を思わせる樽熟成の白ワイン、そして、同品種でありながらセニエ法と圧搾法で違いを際立たせた2種類のロゼ・ワインなど、これまでの旧態依然としたコルシカ・ワインの概念を根底から覆す、上品で洗練されたワイン造りを行っている。元パリジェンヌのセンスを生かしたスタイリッシュでカラフルなプレゼンテーションも斬新で個性的だ。将来的にはバイオダイナミックを目指すと公言する自然な農法から生まれるワインは、柔らかくエレガントで、我々の心を魅了する。
2005年が初ヴィンテージだが、「ルヴュ・デュ・ヴァン・ド・フランス」誌やその他の雑誌でも取り上げられ、パリの三つ星「ラストランス」や二つ星の「グラン・ヴェフール」、ロンドン近郊のニューベリーにある二つ星レストランで、カリフォルニアの先駆的カルトワイナリー「ピーター・マイケル」のオーナーが経営する「ザ・ヴィンヤード・アット・ストッククロス」などを筆頭に、フランスとイギリスの多くの星付きレストランで採用された実績を持つ(ミシュラン評価は当時のもの)。新時代を牽引するコルシカワイン、それがクロ・フォルネリだ。
|
|
クロ・フォルネリはコルシカ島東部に位置する。島の西海岸は断崖絶壁が続いているが、ティレニア海に面した東海岸には島でも数少ない平野が広がり、所々でラグーン(潟)も見られる。ドメ−ヌは、中部アレリア近辺でカキやムール貝の養殖が行われているディアヌ潟から北西方向にやや内陸に入ったタロンヌ Tallone村に本拠を置く。2,500メートルを超える高峰が連なるコルシカ島の中央部は冷涼多雨で、冬季には雪が積もり、スキー場もあるが、沿岸部の気候は地中海性気候で、暑く乾燥した夏と温暖な冬が特徴。日照量はフランスで最も多く、雨は晩秋から冬の初めと春先に多い。海からも山からも影響を受けるミクロクリマはブドウの成熟に理想的な気候。なぜなら、海によって夏の暑さが穏やかになり、乾燥に対する水分の盾になり、さらに起伏に富んだ地形が温度と湿度の調整に大きな役割を果たしてくれるため。このような条件は、ブドウの漿果のゆっくりとした成熟とバランスに対し非常に有益で、その結果、ワインのアロマとフィネスの質を保証するものとなっている。
畑の土壌は丸い小石が混じった沖積土壌。痩せた土壌だが、心土が深く水捌けが良い。このため、ブドウ樹への適切な水分供給が可能なテロワール。畑は北東、北西、南西に面した日照の良い区画に点在。ドメーヌの所有地所は45ヘクタールで、そのうち16ヘクタールでブドウを栽培している。栽培品種はスキアカレッロ(6ヘクタール)、ニエルッチオ(5ヘクタール)、ヴェルメンティーノ(3ヘクタール)、シラー(2ヘクタール)。その大半が、先代のマルセル・ヴァヌッチが1970年代に植樹したもの。現在ブドウの平均樹齢は20年で、最も古い区画は30年に達する。若いものでも10年を越えている。また、今や消滅しつつあるコルシカの古代品種、ビアンコ・ジェンティル Bianco Gentile(白ブドウ)とミニュステリュ Minustellu(黒ブドウ)を1ヘクタールに植樹し、将来的にさらなるコルシカの個性を表現するワイン造りを目指している。
写真上:当主ジョゼ・ヴァヌッチと夫のファブリス・クルメール
|
|
栽培方法はリュット・レゾネで、病害防除に際しても可能な限り自然な物質を使用している。もちろん除草剤は使用しない。環境への配慮から、コルシカでは極めて希な廃水処理施設も備えている。また、まだ完全には実践していないが、ブドウが植えられている土壌の生命とバランスの維持を目的とするバイオダイナミックに農法に強い関心を持っており、例えば、古過ぎるブドウ樹を引き抜く際には、カブトムシやイモ虫が地中を這っていないかを確かめるなど、地中の生命に気を配っている。ドメーヌでも実践している下草を生やしてブドウ樹の根を地中深く伸ばすことや、殺虫剤や除草剤を排除して、土を鋤き、地中の野性酵母を守ることは、バイオダイナミックにおける最初のアプローチと共通する。ドメーヌでは、ブドウ、つまりワインの中にテロワールを表現するには人間の良識が必要であり、その観点からバイオダイナミックによる天体と地球の関係からのアプローチは、様々な点で情熱的かつ神秘的で、これから数年を掛けて目指すべき進歩的なモデルと考えている。
秋の収穫が終わり、最初の雨が降った後、手作業で雑草を取り除く。その後、土を耕した後、表土に伸びているブドウの根を切り、ブドウ樹の根元を土で覆い、土が冬に向けて栄養素を蓄えられるように誘引する。春から夏にかけては下草を生やすが、乾燥が続き、水分が不足する場合には、草がブドウと競争して地中の水分を吸収してしまうので、除草を行う。生育期のこの間は、畝の耕耘も定期的に行う。剪定方法はコルドンで、1-2芽を残した6-8本の太枝を両側に残す。収量は芽かきを手作業で行うことで調整し、生育期に2-3回の摘心を行う。グリーン・ハーヴェストは芽かきが十分でなかったり、豊満な年などに実施する。収穫時には、品種に応じて1株につき5-8房のブドウが残るように調整する。1房は約200-300グラム。植樹比率は1ヘクタール当り4,000本。
|
|
テロワールとは、気候や表土、心土、水理学などの自然要因と、人の手による作業やノウハウなどの人為的要因の総体であると定義される。しかし、この自然要因の中でも、水がテロワールの概念に非常に大きな影響力を持っていることはあまり知られていない。乾燥が続くとブドウの収量が減ることから、現在INAOは一部のAOCで灌漑を認めているだけでなく、今まで灌漑が禁止されていた地域でも灌漑を合法化しようとしている。しかし、灌漑は最悪の方法である。テロワールを灌漑するということは、魚を溺死させるということを意味する。なぜなら、通常、ブドウは水分の不足する乾期には、地中の奥深くから水を汲み取る。しかし、灌漑によって畑の表土に水分が存在する場所ができると、怠慢になって表土に水分を求めることで満足してしまい、本来必要な栄養素を地中深くから汲み取ることを止め、人工的に灌漑した表土から吸収してしまうようになる。化学肥料を散布した畑において、ブドウの根が表土に撒かれた肥料から養分を吸収してしまうようになるのと同じで、ブドウの根が地中ではなく表土に迂回した形で養分吸収を行うようになった場合、ワインにテロワールが表現されることはありえない。
ドメーヌの当主ジョゼ・ヴァヌッチはこう述べている:
「技術とは隠れた真実を明らかにするもので、何かを創造する方法ではありません。水という根本的なテロワールの構成要因に手をつけてしまったら、もはやテロワールを語れなくなってしまいます。昔から私達は灌漑は一切行ってきませんでした。つまり、水理学の観点からドメーヌのブドウ畑のテロワールは全く変化していません。私達は市場の需要にも迎合しません。現在の消費者は、ソフトでまろやかで果実味のあるワインを求める傾向にありますが、がっちりとしていて、タニックで、若いうちは粗野であるのがニエルッチオの特性です。テルモヴィニフィカション(*)のようなワインをソフトにする技術で、ニエルッチオの個性を消して、異なる味わいに変質しようとするのは、整形手術を繰り返して白人になろうとしたマイケル・ジャクソンのようなものです。私達は技術をよりどころにしません。魂を失い、すべてを可能にしてしまっているテクノロジーを忌み嫌います。ワインとは神聖な物ではありません。流行に左右されない農産物です。ブドウ栽培家は職人であり、食品会社の生産部長ではないのです。」
*テルモヴィニフィカション Thermovinificationとは:
ブルゴーニュのルイ・ラトゥール社が使用するパストゥリゼーション(瞬間殺菌法)が発酵の終了したワインに行われる、いわゆる殺菌法であるのに対し、テルモヴィニフィカションは、収穫仕立ての発酵前のブドウ果実に対して行われる。これはブドウ果皮からアントシアニンやタンニンなどの色素と果実味を可能な限り抽出して、発酵時の果皮浸漬を短縮し、フルーティーで若いうちから楽しめるワインに仕立てる目的で行われている画期的な新技術。テロワールやワインの個性を変質してしまうと賛否両論がある。
クロ・フォルネリでブドウの成熟を測る基準は、潜在アルコール度数と酸度だけではない。技術偏重の現代の傾向ではこの2つだけが語られることが多いが、ポリフェノールやアントシアニンといった色素やタンニンの元となるフェノール類の成熟も見極める必要がある。このためドメーヌでは8月の終わりからは、毎日ブドウの粒を採取して成熟度を確かめている。皮をしっかり噛み、果肉をかじって、タンニンが青臭くないかどうか、収斂性がないかどうかを確かめて成熟を判断している。左の写真は、2007年の収穫日前日のスキアカレッロのブドウ。ドメーヌではこの状態が、フェノール類の成熟も含めた完熟であると見なしている。
|
|
2005年のドメーヌ継承と同時に、水平圧搾機、ステンレス製の除梗機、赤ワイン用のセメント・タンク、白とロゼ・ワイン用のステンレス・タンク、空調設備などに大掛かりな投資を行ったため、現在ドメーヌの醸造所には最新の醸造設備が整っている。
醸造所に運ばれたブドウは、品種毎、区画毎別々に醸造される。赤ワインはセメント・タンクで発酵を行い、白ワインと直接圧搾のロゼ・ワインはステンレス・タンクで低温発酵を行う。
生産されるワインは、区画名である「クロ・フォルネリ」の名前を冠したスタンダード・キュヴェと、プレスティ−ジュ・キュヴェである「ロブ・ダンジュ」の2つのラインナップがある。どちらも赤・白・ロゼの3種類がある。
←フランス製トロンコニック(円錐形)オーク樽
ドメーヌでは、自身のワインの特徴を男性的ではなく、上品で滑らかで完璧なワインと心に触れるワインとの間で、感激を与えられるワインと定義している。ロブ・ダンジュは、オート・コルス県(コルシカ北部)で造られるワインの中で最もスキアカレッロの比率が高いワイン。
|
|
・Vermentino ヴェルメンティーノ
マルヴォワジ・ド・コルス Malvoisie de Corseとも呼ばれる、地中海沿岸で非常に高い品質の白ワインを生む品種。典型的な辛口の白ワインで、豊満で、力強い口中と高いアルコール度数があることが特徴。緑がかった黄色の反射を備えた麦藁色の色調。花やリンゴ、アーモンドを思わせる強い香りを持っている。プロヴァンスの東部で長い間栽培されているロールと同一品種であると考えられている。また、一部の人達はマルヴァジア品種と関係があると信じている。ヴェルメンティーノはコルシカ島で最も栽培されている白ブドウ品種で、この島の白のAOCワインを支配している。1980年代の終わりにはコルシカ島でのこの品種の作付面積は400ヘクタールに達していた。
・Niellucciu ニエルッチオ
コルシカ島で3番目に広く栽培されている品種で、ブドウ分類学上、トスカーナのサンジョヴェーゼと同一であるとされ、18世紀後期までコルシカ島を支配していたジェノヴァ人によってイタリア本土から持ち込まれたものと考えられている。非常に上品な緋色のローブを備え、凝縮してタニックで、甘草のノートが支配的なレッドフルーツやスミレを思わせる香りを、微かな木のニュアンスとともに発散するワインを生み出す。熟成とともに、スパイスや灌木の香りへと変化していく。
・Sciaccarellu スキアカレッロ
スキアカレッロという名前は、コルシカの言葉で「噛み締める」を意味する「シッカ sciacca」に由来する。コルシカでのみ栽培される品種で、必ずしも色調は濃くないが、偉大なフィネスと傑出した胡椒のブーケ、レッド・フルーツやスパイス、コーヒー、灌木の花などのアロマを持った、しなやかで高貴、しかも深い味わいの赤ワインと、島のハーブ類の茂った低木地帯の香りを持つ優れたロゼを産出する。病気に対する抵抗力が強く、発芽も成熟も遅い。ローマ人によって移植されたものらしいが、いまだにイタリアの品種との関連は特定されていない。
・Bianco Gentile ビアンコ・ジェンティル
今や消滅しつつあるコルシカの白葡萄の古代品種。コルシカ原産の個性ある品種。Carajolo Blancという、味蕾に心地良さを与えてくれる白の葡萄品種によく似ている。酸味がやや欠けているようでも、アロマが不足しているということはない。金色に反射する明るい色が特徴。柑橘系砂糖漬けと熟れた果実のノートは飲む者を驚かせる。果皮が多肉で汁液に富む中サイズの果実から果汁が搾り出され、畑の傾斜・日照量によりある果粒は琥珀であったり、明るい黄色、緑がかった白など色が多様化される。果肉は非常に甘みがある。濃い緑色の葉が目立った特徴で、芽吹きが早い。若木は樹勢がよく、粘土石灰または石灰質に植えられた株からは十分な収量が期待できる。果房はやや密着した円筒〜円錐形でサイズは比較的大きめ。ブドウの熟成度合いによって、グレープ・フルーツ、さらにはアプリコットのノートをもつ輝きのある白ワインを生む。
・Minustellu ミニュステリュ
古文書によれば19世紀までコルシカ南部のSarteneサルテーヌやAjaccioアジャクシオで主に栽培されていたが20世紀にはほぼ絶滅に瀕したコルシカ土着の品種。近年コルシカでは地元の言葉で“Riaquistu(=再適合)”を共通目標に掲げ、いくつかの生産者たちが再生に取り組んでいる。現在コルシカ島全土で13haの栽培面積があり、葡萄分類学上、イタリアのCagnulari N、ポルトガルのTinta muida、スペインのTintilla de Rota、マルタ島のGracianoと同一とみなされている(『コルス葡萄栽培研究所のデータ』より)。丘陵地の収量は適正量、平地では高収量。樹形は直立。酢酸腐敗(pourriture acide)に弱く、成熟は非常に遅く、気候による影響を受けやすい。ミニュステリュから造られるワインの特徴は非常に色が鮮やかで上品な赤いローブ。桑の実やブルーベリーなどの黒系果実や、さくらんぼの小さな赤系果実の表現豊かな香りに、スパイス、バルサミコ、ミント、カカオのニュアンスが僅かに感じられる。マティエールがあり、タンニンはしなやかでシルキー。単一、アッサンブラージュのいずれにも用いられる。
・Genovese ジェノヴェーゼ
コルシカ島で栽培されているジェノヴェーゼは、イタリアのジェノヴァ地方原産の古代のブドウ品種。房は小-中サイズで、密度が高く、翼のような岐肩のある円錐台形である。果粒は適度に大きく、楕円形。果皮は厚みがあり、色は白から琥珀色。果肉は非常に甘く、成熟が早い。満足のいく収穫のためには剪定し、トレリス仕立てにすることが必要。ジェノヴェーゼは良いテーブル・ワインでありながらも、典型的ではっきりしたアロマの辛口白ワインを造り上げる。その酸味とアルコールのバランスにより、完璧にバランスが取れている。
|
|
|
|
Clos Fornelli AOP Corse, Rouge
|
|
Clos Fornelli AOP Corse, Blanc
|
|
Clos Fornelli AOP Corse, Rose
|
|
La Robe d'Ange AOP Corse, Rouge
|
|
La Robe d'Ange AOP Corse, Blanc
|
|
La Robe d'Ange AOP Corse, Rose
/ラ・ロブ・ダンジュ(コルス) ロゼ
==>> 詳細はこちら |
|
Vini Navigati AOP Corse, Rouge
/ヴィニ・ナヴィガティ(コルス) 赤
==>> 詳細はこちら |
|
Chiosu Fornelli Minustellu Vin de Table, Rouge
/シオス・フォルネリ ミニュステリュ(ヴァン・ド・ターブル) 赤
==>> 詳細はこちら |
|
Chiosu Fornelli Bancu Gentile Vin de Table, Blanc
/シオス・フォルネリ ビアンコ・ジェンティル(ヴァン・ド・ターブル) 白
==>> 詳細はこちら |
|
Chiosu Fornelli Genovese Vin de Table, Blanc
/シオス・フォルネリ ジェノヴェーゼ(ヴァン・ド・ターブル) 白
==>> 詳細はこちら |
|
Stella Rose AOP Corse, Rouge
|
|
Stella Rose AOP Corse, Blanc
|
|